こんにちは。夫です。
子供の頃。親と映画を観に行くと、必ずコカコーラとポップコーンを買ってもらっていました。
現代のものとは違い、普通の塩味で袋入りのものでしたが、それでも映画を観るための大切な儀式。
上映中に音をたてないようポップコーンの袋は開けてスタンバイ。いい香りが漂いますが、まだ食べません。
これは駅弁とビールを買っても、列車が動き出すまで待つ感覚と同じです。場内が暗くなって、さあ始まる‥‥‥‥いやコマーシャルだ。まだ食べません。
なんだかんだ15分ほども待たされて、やっと本編のスタート。
いざ始まると、一気に映画の世界に引き込まれて、ポップコーンのことは忘れています。
タイトルバックに入って、はっ、と両手に持っているコカコーラとポップコーンに気づきやっと食べ始めます。
「うまいなあ。やっぱり映画にはポップコーンだなあ」などと感動するも、この後はもう映画に夢中。
いつ食べたのかは覚えていませんが、映画が終わる頃にはコカコーラは飲み干し、ポップコーンもほとんど空になっています。
そして場内の明かりがつくと膝の上にポップコーンのカスが雪のように積もっており、隣の人にバレないように手で払って終了。長年続いている正しい映画の鑑賞法です。
そして時は50年ほど流れ、現代。
映画館のロビーの売店には、実に多彩なポップコーンがいい匂いをさせており(6種類もあるとか)、若いカップルが楽しそうに選んで、洒落たポップコーンカップに入れてもらっています。飲み物も驚くほどの種類です。
でも私は買いません。なぜって、その、最近、ト、トイレが近くなってしまい、飲み物を飲んでしまうと映画の最後まで持たないのです。ううっ。
ずっと楽しみにしていた “ ブレードランナー2049 ” など3時間近くもあるため、館内の飲み物はおろか朝から水分を控えめにしていたくらい。
そういえば “ 007/スペクター ” を夫婦で観に行った時のこと。私たちの前の席に同世代と思われるご夫婦が着席されました。ご主人は大きなポップコーンとブリトーみたいなものとコカコーラが乗ったトレーを抱えています。
「すごいなあ、この人。同い年くらいなのにトイレ大丈夫なんだろうか」
つい余計な心配をしてしまいます。
すると上映前からすごい勢いで食べ始めました。
「えっ、もう食べ始めるの? なんで?」
まったく、つい余計な心配をしてしまいます。
そして映画中盤。ご主人はいきなり席を立ち、どこかへ旅立たれました。なかなか帰ってきません。
わかります。ガマンして限界近くにトイレに行くとなかなか終わらないんですよね。
そして、帰ってこられて15分ほどすると、ご主人、また旅立たれました。
わかります。一度出始めると何度も行くんですよね。
やっぱり、みんなそうなんだ。
あのきらびやかなロビーの売店で買い物をするなんて夢のまた夢になってしまいました。
若いっていいなあ。
つい先日、夫婦でショッピングモールに買い物に出かけた時、よく立ち寄る AWSOME STORE(オーサムストア)でスゴイものを見つけてしまいました。
ポップコーンカップです。
映画館のモノよりアメリカンなデザインで紙製じゃないので洗って何度でも使えます。
「そうだ! コレにポップコーン入れて、コカコーラ飲みながらブルーレイ観よう!」
我ながら、表彰ものの素晴らしい思いつきです。
パソコンのキーボードブラシを見ている妻を引っ張ってきました。
「コレ、コレ買おうよ!」
「えっ? なんでこんなものが欲しいの?」
「これにポップコーン入れてブルーレイを観るんだ!」
「変な人」
「何言ってる。正しい映画の鑑賞方法というのはだな‥‥‥」
「わかったわかった、そんなにいうなら買っていいから」
まったく、数百円のポップコーンカップ1個を買ってもらうのも一苦労です。
その帰りに年に1度くらいしか飲まないコカコーラの2リットルボトルとポップコーンを購入しました。もちろん塩味です。
帰宅してすぐに洗い、水分を拭き取ってから、入れてみると一袋がちょうどのサイズでした。
素晴らしい設計です。お盆にコカコーラと氷を入れたビアマグもセットし、寝てもいいように布団の上に陣取ります。準備万端、高まりも最高潮です!
「何を観ようかな?」
「この間買った “ 羊たちの沈黙 ” は?」
「いや、アレは飲み食い不可作品!」
「じゃ、どうする?」
結局、題名も覚えていない邦画をアマゾンプライムで鑑賞しました。
いやー久しぶりに堪能しました。やっぱり映画にはポップコーンとコカコーラですね!
まさに “ I Feel Coke ! ” です。
そして映画が終わって、ふと見ると布団にポップコーンのカスが雪のように。
「キャー 何コレ! どういう食べ方するとこうなるの! 」
「いや、コレも正しい映画の鑑賞方‥‥‥」
いい歳をしてポップコーンを落としたカドで怒られました。
いやー 映画って本当にいいモノですね。
なぜか、三度登場の夫でした。